- Rope - ロープとは


ロープについて

ロープは私達の仕事においてはまさに命綱なわけです。

ロープには色々な種類や構造があり、その種類はまさに膨大な量に登ります。

その中から、使用する目的や作業条件等によって選び出さなければなりません。

まずはロープの基本的なところから確認したいと思います。

そもそもロープって何だろう?

ロープとは、ヒモや針金などの細長いもの繊維状のものを、より合わせた物の総称ということになっています。

←これはロープ

←これはビニールヒモ

←じゃあこれは?

そう、ビニールヒモを編んだやつ。これで正解。

だけど、ビニール製のロープ。これでも正解。

つまり、ロープって細長いものを、より合わせたら何でもロープって事になる。

よくこんな質問されませんか?

「ロープとワイヤーってどっちが使いやすい?」なんて。

厳密に言えば、ワイヤーもロープなんですよね。細長い針金(素線)をよって作ってあるから。

じゃあ、どうやって目的に合うロープを絞り込んでいきましょうかってなりますよね。

ロープの使い方は2通り!?

誤解を招く恐れもありますが、もの凄く大雑把にいうと、ロープでは2つの事しかできないと僕は思ってます。

それは、「縛る」と「引く」です。


まずはこれ、「縄」って言いますよね。

ロープのイメージってこれが一番近いと思います。

これは、縛る、結ぶ、を目的に使用します。

悪人を縛っておくことから、捕まることをお縄になるなんて言いますよね。

ちょっと分かりにくいですが、次はこれ。

縄が太くなると「綱」って言いますよね。

これは、けん引、つなぐ、を目的に使用します。

綱引きって競技があるけど縄引きはないですよね。

冒頭にあった命綱、これも命を繋ぎとめるから綱

であって、命縄とは言わないですよね。

余談ですが、英語ではどちらもロープと言います。

ところが日本語では縄と綱はその使用目的によって言葉を使い分けてる。

これが日本語の素晴らしい所と難しい所でしょうか?

つまり、結ぶ「縄」と引く「綱」これはどっちもロープなんです。

広辞苑では細い物は縄で縄が太くなると綱となるって書いてあるようなんですが・・・

ややこしいのは、確かに太いロープで物を結ぶのは難しいかもしれませんが、細いけど結びにくくて、でも太いロープに負けないくらい物を引っ張るのが得意な細いロープは存在してしまうんですよね。

だから、太さによって縄と綱を分けてしまうのは、ちょっと違う気がするんですよね、目的で分けた方がしっくりくる気がするんです、僕だけでしょうか?

ちなみに、たまにザイルとロープって何が違うの?って聞かれることがあるのですが、これは簡単、ザイルはドイツ語でロープのことですね。

こうなってくると、ロープって定義が曖昧だし、英語では綱も縄もどっちもRope。結局何がロープなの?どうやって選べばいいの?

ってなってきます。

だからこそ、ロープの構造を知り、特徴を知って、ロープの勉強をしないと、目的のロープにはたどり着けないのです。

ロープの構造ってなに?

ロープは構造により2種類に分けることができます。これは前述の使用目的による2種類とは全く違う分け方なので注意が必要です。

単純に物を縛りたいから細い縄なら良いのか?物を引っ張りたいから太い綱なら良いのか?もちろんそんな単純なわけにはいきません。

1)よりロープ(ストランドロープ)

これは繊維(ファイバー)をより合わせて作った糸(ヤーン)を、さらにより合わせて子縄(ストランド)にして、さらにそれを複数本より合わせたロープです。

ヤーンとストランドはよりの方向を逆にしてあるので、簡単にはほどけないようになっています。

よりの方向でZより(左より)とSより(右より)に分類されます。

3本のストランドをより合わせたZよりのもの、が一般的ですが、八打ちと呼ばれるZよりを4本Sよりを4本より合わせたものもあります。

後述の編みロープより強度的に弱く、やや硬くよじれができやすいという特徴があります。


2)編みロープ(ブレイドロープ)

編みロープは比較的新しい技術といっても過言ではないと思います。

こちらはヤーンやストランドを編んで作ったロープになります。

単層構造のシングルブレイドとカバーとコア(芯)で作られた、2重構造のカーンマントルがあります。

素材繊維が一緒の場合、編みロープはよりロープに比べて、伸びやすいがキンク(くの字に曲がったまま戻らなくなる)や型崩れが少なく、荷重を掛けたときのねじれやよりが戻る方向の回転が生じにくいので、扱いやすいという特徴があります。

ここで、カーンマントルについてですが、カーンマントルはコアとカバーがあるロープという意味です。(だと思います)

カーンマントル構造には2種類あり、コアが細くカバーに対し平行に数本走るものをパラレルコアといい、コアも編みロープでできたダブルブレイドがあります。

ここに、ややこしい所があって、単層だからシングルブレイドとは想像つきやすいのですが、2層構造になればダブルブレイドかっていうと、そうではなくて、パラレルコアとダブルブレイドは同じ2層構造でも違うということです。

じゃあ、どっちもカーンマントルロープ?かっていうと・・・

カーンマントルロープといえば、実はブレイドのカバーと数本のストランドがロープと平行に入っている、パラレルコアのロープを指すのが一般的なようです。

(このあたりは、メーカーや各種協会等の見解により若干違いがあるようですが・・・)

さらにここに、伸び率の大きいダイナミックロープと伸びが少ないスタティックロープがあるよなんていうから、頭が混乱してくるんですよね。

とにかくロープには色々な構造があるってことは分かったと思います。

ざくっと代表的な感じでいうと。

12ストランドロープ(ホローブレイド)

12本のストランドを編み込んであるロープです、他のロープに比べ強度は1番あります、さらにねじれにも強いです。

ですが、摩耗に弱いため、けん引作業には不向きです。

器具の取付けに使用します。

16ストランドロープ

16本のストランドを編み込んであり、中に芯つまりコアがあります。カバーは厚みがありねじれにくいのが特徴です。

コアはロープの形を丸く保つ程度の働きがメインで、荷重のほとんどをカバーが支えます。

クライミングロープとして使います。

ダブルブレイドロープ

カバーもコアも編みロープでできたものです。

カバーとコアでほぼ半分づつの荷重を支えます。

カバーとコアがずれて強度が弱くなることを防ぐためにプーリー等にロープをセットして使用します。

そうしないとロープ本来の強度が発揮できない可能性があります。

ツリーワークにおける、クライミング、リギング、プルージックコードとして使用します。

カーンマントル(パラレルコア)ロープ

48ストランドといった非常に目の細かいカバーでできています。滑らかで、器具(アッセンダー/ディッセンダー)との相性が抜群です。

こちらのカバーは薄く、すれ防止程度の機能しかなく荷重のほとんどはコアが支えます。

ツリーワーク以外の高所作業でよく使用されます。

のび〜るロープと、のびないロープ

人によっては頑なにロープは伸びるもんだと信じている人がいますが、ロープには使用目的によって伸びるロープと伸びないロープの2種類が存在します。

ロッククライミング等で手足を使って岩肌などを登っていく人を想像してください。もしも墜落した時、命綱であるロープがゴムのように伸びて衝撃を吸収してくれたら、体への衝撃はとても少なくて済みます。

一方、ビルの屋上から荷物を上げ下げしようと想像してください、伸びたり跳ねたりするロープで効率よく作業できるでしょうか?

高所作業ではロープに吊り下がって登ったり降りたりを繰り返すと思えば、できるだけロープは伸びない方が効率がよいことは想像しやすいと思います。

一般的に伸び率が36%以上のものをダイナミックロープ、5%以下のものをスタティックロープといいます。

(伸び率とはそのロープが持つ破断荷重の10%の荷重をかけた時の伸びです)

ダイナミックロープとスタティックロープは見た目での判断は不可能です。

クライミングに限っていえば、若干の伸びがあったほうがやりやすいという意見が多くあるので、セミ・スタティックロープというものを使用する人も多く存在します。

ロープは何でできている?

次にロープの素材に目を向けて見ましょう。

綿や麻などの天然素材から化学繊維など様々ですが、その中でも、汎用性に優れたクラス1というカテゴリーと近年開発が進んでいるクラス2というカテゴリーとそのどちらにも属さないその他素材に分類されます。

クラス1

ナイロン

ナイロンはポリアミド繊維と呼ばれるものの一つです。

強度、耐薬品性、耐熱性、耐衝撃性、さらに柔軟性とまさにオールラウンドな性能です。

主にダブルブレイドロープのコアに使用されています。


ポリエステル

ポリエステルはナイロン並みの強度があり、低い伸び率、耐酸性、耐磨耗性、対紫外線に優れた性能です。

水に濡れると強度が増すという特徴があるため、漁具や船舶関係に多く使われてます。

カバーやコアなどどちらにも使用されてます。


クラス2

アラミド系繊維

アラミド系繊維は耐熱性、高強度、耐摩耗性に優れていますが、紫外線に弱いです。

ケプラーやテクノーラが該当します。ケプラーはアルカリ性に弱いですが、テクノーラは耐薬品性もあります。

防弾チョッキやヘルメットなどにも使用されます。

摩擦熱に非常に強いことから、ポリエステルとの混紡ですがプルージックコードのカバーに使用されます。

LCP(非晶ポリアリレート系繊維)

LCPは耐候性、耐紫外線、耐衝撃性、耐摩耗性、耐熱性に優れています。耐薬性においては強酸とアルカリ性に弱いです。

ベクトランが該当します。

漁網や釣り糸に使用され、こちらも熱に強いことからプルージックコードのカバーに使用されます。

HMPE(超高分子料ポリエチレン)

HMPEは耐衝撃性、耐摩耗性、自己潤滑性、耐薬性に優れています。比重が軽く水も吸わないので、水に浮きます。

ただし、熱に弱いので摩擦熱が発生するような使い方はできません。

ダイニーマやベクトランが該当します。

最近少しずつですが、見かけるようになってきたウィンチロープに使用されます、他にも牽引用ロープ、スリング、船舶用係留ロープなどに使用されます。

その他の素材

ポリエチレン

ポリエチレンは耐薬品性に優れ、絶縁性があり耐水性で水に浮きます。熱や紫外線に非常に弱いです。

一般的には、包装用フィルムやカップ容器などに使用されますが、みんな大好きトラロープはポリエチレン製です。

やっとまとめ

長々となりましたが、これくらいの知識は最低限必要かなと思います。

ここまで読めば、今までただ漠然と「ロープ」と呼んでいたものが、なんとなくでも、" ダブルブレイド・クラス1・24ストランド・12mm " ってロープがどんなものかわかってきたでしょ?

そして、自分の使ってるロープがダイナミックロープ?スタティックロープ?何ストランドなの?

なんて、ロープにどんどん興味が湧いてきたでしょ?